タイトル

時間割番号: 0040350201
情報学群実験第3i
 
担当教員
吉田 真一, 植田 和憲[YOSHIDA Shinichi, UEDA Kazunori]
開講学部等 正規科目 対象年次 3~ 単位数 2
開講時期 1Q 開講曜時 月3~4,木3~4 クラス  
授業の目的  
受講者は,計算機ハードウェア,ソフトウェア,情報通信の技術を習得することを目的として,インターネット技術をはじめとする計算機および情報通信の分野での標準的な機器,サービスの設置,構築を行う.
本授業は,情報と人間専攻・情報とメディア専攻の3年生を対象としている.
本講義では,LinuxをはじめとするUNIX系OSを使ったサーバの構築と,UNIX系OS,Microsoft Windows,Apple Macintosh をネットワーククライアントとして使うためのネットワーク設定を行う.さらに,ネットワークケーブルの作成,スイッチ(ブリッジ)やルータを用いたTCP/IPネットワークの設計,およびそれらの上に構築される代表的なネットワークサービスを構築できるようになることを目的とする.
近年,計算機およびインターネット技術は大きな発展を遂げ,数多くの有用なサービスが実現されているが,受講者はそれらのなかで,特に重要かつ根本的な仕組みを理解するために,HTTPサーバや電子メールサーバなどの基礎的かつ実用性の高い技術の習得を目指す.

※本科目は情報学群3年生科目であり,本学群『学修の手引き』での3年生科目履修条件を満足する学生が履修可能である.本年度4月1日時点での取得単位数が60単位未満の学生については,原則,履修を認めない.なお,特別な理由がある学生については,科目担当教員の許可のもと履修を認めることがある.
 
授業の概要  
本授業は実験科目であり,数名(4-5名)のグループを作り,グループごとに実験を進める.実験課題はイーサネットや TCP/IP ネットワーク構築,サーバ構築,クライアントのネットワーク設定に関する7項目があり,この7項目をグループにて構築,あるいは解決する.

具体的には,ネットワークケーブル作成,スイッチ(ブリッジ)・ルータ (Cisco IOS) の設置・接続・設定,サーバの構築(Linux OS のインストール・設定,サーバソフトウェアのインストール・設定),クライアントの設定(Windows, Mac, Linux)に関する課題を行う.

本授業では,グループで協同して各実験項目及び関連課題を解決する.更に,実習内容の記録を残すことで常にメンバー全員が情報を共有し合うようにする.情報システムの構築は,複数のエンジニアが協力して作業を行うことも重要であるので,グループの他のメンバーと協調せず個人で勝手に実習を進めることのないよう注意すること.
 
到達目標  
本授業の到達目標は,ネットワークおよびネットワークサーバを構築できるようになることである.

本実験を通じて,コンピュータシステム,ネットワークサービスを自ら構築することにより現代のコンピュータ技術,TCP/IPネットワークの仕組みならびに機能などを理解し,情報処理システムを現実に活用するための技術と学術的な探求心を函養する.本実験により以下のような能力を身につける.
(1) 与えられたコンピュータ機器について導入,適切な設定を施し,健全な状態に保つこと
(2) 与えられたネットワーク機器を接続し,適切な設定を施し,健全な状態に保つこと
(3) IPアドレス,ルーティングなどのIPネットワークの設定を行うこと
(4) UNIX, Windows, Macintoshのオペレーティングシステムを操作し,アプリケーションソフトウェアの導入,ハードウェアデバイスの接続,デバイスドライバの導入,設定を行うこと
(5) TCP/IPの名前解決,電子メールシステムの構築を行うこと
(6) WWWサービスの構築を行うこと
(7) データベースシステム,Webアプリケーションソフトウェアの構築を行うこと
 
授業の方法  
本授業では,原則週2回行われ,各回とも3時限目と4時限目に連続して1回の授業とするが,その日の課題の作業が終了しない場合は5限目以降も終了するまで続ける.実習項目は,下記の詳細にあるように独立した項目に分けられており,各実験項目について,2回(初回のみ3回)の授業を使って行う.各実習項目では,コンピュータおよびネットワーク機器の操作,実験器具・機材の使用,部品の作成などを通して,システムの構築から運用・保守に至るまでの基礎的な実習を行う.各実験項目について具体的な課題は提示されるが,それらを実現する技術,ソフトウェアや機器の操作方法については細かく触れないので,履修者は,各授業を行うにあたり事前に関連技術,知識の予習を行ってくる必要がある.

各実験項目を開始する際,授業の最初に20分の実験項目の説明を行う.ここで,この実験項目の目的,内容,具体的に使用する技術とその概念,使用する機器・ソフトウェアとその操作方法について簡潔に説明を行う.各グループについて最低1回,この説明を行うこととする.説明を担当する回のグループは,事前に予習を行い,プレゼンテーションを作成し,20分でこの説明を行うものとする.

本講義では,グループによる事前の準備(知識や技術の予習)が重要で,最低1回はグループによる授業の冒頭での発表を行う.また,授業参加者によるディスカッションも重要である.

その他の注意事項として,実習中は不具合,操作ミスなどにより実習項目を達成するために多くの時間が必要になる場合もしばしば発生するため,グループによっては3時限目および4時限目内では終了できずに実習を延長する場合もあることに留意すること.実習を延長する場合でも,各グループごとにメンバー全員で最後まで責任を持って行うこと.

レポート提出が数回あり,本授業の成績は,このレポートの内容により決まる.定められた期限までに,定められた項目について記述されたレポートを提出しなかった場合は,単位取得は認められない.レポートは定められた様式で作成するものとする.

各実験項目ごとにレポートを課し,実験項目の作業完了後,1週間後までに LMS にて提出する.レポートは,指定されたスタイルファイルを用いた LaTeX により作成し,PDFファイルにて提出する.
レポートは全7報であり,これにより受講者個人の成績を評価する.

本授業は実験科目であり,すべての授業に出席することが単位認定の前提である.遅刻および欠席のあった場合は単位取得は認められない.
 
授業計画  
下記にあげる7項目について,15回の授業で実験を行う.

実習項目1.オペレーティングシステム・ネットワーク設定
(第1回~第3回)
サーバおよびクライアント用オペレーティングシステムをインストールし,基本的な設定を行う.また,ネットワークケーブルを作成し,スイッチを介して相互に接続し,基本的なネットワーク設定を行う.
本項目では,UNIX系(Linux)・Microsoft Windows・Apple Macintoshなどの種々のオペレーティングシステムおよびその構成について理解を深め,それぞれのネットワーク設定(IPアドレス,ネットマスク,ルータアドレス,DNSサーバなどの概念)・サービス利用方法を習得する.ケーブルの作成においては,Category5 Ethernet ケーブルの製作を行い, Ethernetケーブルのうち非シールドツイストペア(UTP)ケーブルの構造を理解する.

実習項目2.ルータとスイッチの管理
(第4回・第5回)

Cisco IOS により動作するルータおよびスイッチを用いて,レイヤー2の設定,レイヤー3の設定を行う.
レイヤー2では,データリンク層であるイーサネットの設定であり,適切なデュプレックスの設定,リンク速度の設定,
VLANの設定などを行う.
レイヤー3では,IPアドレスの設定,ルーティングの設定,ルータインターフェースの設定を行う.

実習項目3.名前解決(DNS)サービスと電子メールサービス
(第6回・第7回)

インターネット上では,すべての端末はIPアドレスにより識別されるが,通常利用者がこのアドレスを利用することはない.その代わりに利用者は「ホスト名」により自分が利用するコンピュータシステムを識別する.ホスト名とIPアドレスの対応づけを名前解決と呼ぶ.本課題では,hostsファイルおよびDNS(Domain Name System)を用いた名前解決システムを構築することにより,ネットワークシステム構築上の基礎となるサービスを構築する.本課題を通して,DNSのよるインターネットの階層的・分散的名前解決システムの仕組み,オペレーティングシステム上のhostsファイルとの利用切り替えを実現する.

また,電子メールシステムの構築を行う.MTA(Mail Transport Agent),MDA(Mail Delivery Agent)によるメールサーバ設定,クライアントにおけるMUA(Mail User Agent)設定を行い,SMTPやPOPなどの電子メールシステムでの基本的なプロトコルを扱うシステムを構築する.

実習項目9.WWW
(第8回・第9回)
現在のインターネットにおいて,もっとも広く利用されるWorld Wide Webサービスを構築する.本課題では,Apacheを用いたWWWサーバの構築,設定を行う.ソフトウェアインストール時の設定,および設定ファイルによる動作設定,htaccessファイルなどによるコンテンツのアクセス管理を行う.

また,SSLを用いた暗号化通信によるWebサービス(HTTPS)の構築も行う.

実習項目5.データベース・Webシステム
(第10回・第11回)
MySQLを用いたリレーショナルデータベースシステムサービスの構築を行い,データベースの作成,データの追加や削除,複雑な条件による検索を行う.またデータベースを用いて,HTML形式ファイルなどによる静的なWWWサービスだけでなく,利用者の操作・状況に応じた動的Webサービスを構築するために,SQLによるデータベースサービスの構築および,Apacheとの連携,動的Webシステムの基礎となるCGIやサーバ上でのHTMLプリプロセススクリプト言語のインストールを行う.

実習項目6.セキュリティ・ファイアウォール
(第12回・第13回)
パケットフィルタによるネットワークレベルのセキュリティ設定を行い,ファイアウォールを構築する.また,プロキシによる代替サービスによる利用者への代替アクセス手段を提供する.プロキシは,Squidによるプロキシ(アプリケーションゲートウェイ)の構築と,クライアントをインターネットから隔離するスクリーニングを構築する.

実習項目7.サーバ運用・管理

複数のコンピュータでファイルを共有するファイルサーバの構築を,Windows系コンピュータを中心に用いられるSMB/CIFSおよび,UNIX上でSMB/CIFS共有を実現するSamba, UNIX系を中心に用いられるNFSを用いて行う.また,Network Attached Storage(NAS)およびRAIDを用いて,重要なデータを冗長性を確保し,不意の障害,故障,事故への予防的な対策を行う.

また,ファイルおよびシステムのバックアップとリストアを行い,障害が発生した際は,ハードディスク交換などを行い迅速に復旧する.
 
成績評価の方法・基準  
数回のレポートにて,実習内容に関するコンピュータ技術,TCP/IP通信技術,関連技術などについての記述と構築・変更・設定等の記録の正確さ,実習項目および課題の理解度・達成度を評価する.
各実習項目についてのレポート配点比率は等配分とする.
 ●AA:課題で必要な項目全てが正しく記述されている
 ● A:課題で必要な項目のうち8割以上が正しく記述されている
 ● B:課題で必要な項目のうち7割以上が正しく記述されている
 ● C:課題のうち特に重要な項目について概ね正しく記述されている

レポートの記述は,本授業の成績評価に重要な影響を及ぼすものであるので,技術文書作成に関する参考書(例えば,木下是雄「理科系の作文技術」中公新書など)に沿った執筆を行うこと.

授業への欠席・遅刻,レポート未提出または提出遅延が一度でもある場合は,実験科目での性質上,単位は認定できません.雄「理科系の作文技術」中公新書など)に沿った執筆を行うこと.
 
授業時間外学習(予習・復習等)  
毎週,授業時間外に,下記を行うこと.
・レポートの執筆・提出

また担当グループとなった場合は,下記を準備すること.

・実験で取り扱う技術に関する説明プレゼンテーション

事前にTAと話し合い,内容を詰めておくことも授業時間外に行うこと.

情報学群実験室に関連図書を用意しているので,授業時間外でも自由に読んで,レポート執筆の参考にすること.ただし,共有物であるので,実験室内で参考にするのみであり,持ち出しはしないこと.使用後は元の位置に戻すこと.
 
キーワード  
OS: 全てのソフトウェア,情報システムの基盤

ルータ・スイッチ: ネットワーク基盤を構成する機器

ネットワークサービス: ネットワークを介して提供される情報サービス

サーバ: ネットワークサービスを実行するコンピュータ
 
他の科目との関連  
本授業では,OS上でソフトウェアの構築,ネットワークサービスの構築を行う作業が中心となるため,ファイル,フォルダ,ディレクトリ,パス(絶対パス,相対パス)などのコンピュータの基本概念と基本操作のほか,コンピュータリテラシ,応用コンピュータリテラシで取り上げているUNIXおよびMacintoshの基本的な操作は既に行えるようになっていることが望ましい.

 ・履修の前提となる必修科目=「情報学群実験第2」
 ・事前の履修が望ましい科目=「通信網概論」,「通信方式」「オートマトンと形式言語」「論理回路」
 ・同時に履修することを推奨する科目=「計算機ネットワーク」「情報セキュリティ」

 ・本実験のより詳細な情報は KUT LMS に掲載する.
 
備考  
本授業は実験科目であり複数学生とのグループによる共同作業を行うため,欠席は原則として一切認められない.傷病などやむを得ない事由がある場合でも,その事由が発生した後なるべく早い段階で事前に相談すること.

同様に全てのレポートについて,要求された内容を全て記述して,期限以内に提出しない場合,単位認定されないので注意すること.

各回の授業内容は,次回の授業内容の前提となるため(前の回を終えないと次回が始められない),各回の内容を終えるまで帰れないことがあるので,グループの作業進捗によっては授業時間の大幅な延長があり得ることを想定すること.

また,部活動は原則授業に優先されないため,正当な欠席理由にもならないので注意すること.

グループ単位での実験科目の性質上,1度でも遅刻・欠席,レポート未提出・提出遅延がある場合は単位は認定できない.
 
教科書  
教科書1 ISBN
書名 ネットワークリテラシー
著者名 高知工科大学情報学群編 出版社 高知工科大学情報学群 出版年 2019
 
参考書  
参考書1 ISBN 978-4274068768
書名 マスタリングTCP/IP
著者名 竹下隆史, 村山公保, 荒井透, 苅田幸雄 共著,竹下, 降史, 1965-,村山, 公保, 1967-,荒井, 透, 出版社 オーム社 出版年 2012
参考書2 ISBN 978-4873111292
書名 TCP/IPネットワーク管理
著者名 Craig Hunt 著,村井純, 土本康生 監訳,林秀幸 訳,Hunt, Craig,村井, 純, 1955-,土本, 康生, 1971-,林, 秀幸, 1962-, 出版社 オライリー・ジャパン 出版年 2003
参考書3 ISBN 978-4873111384
書名 UNIXシステム管理
著者名 Æleen Frisch 著,飯塚正樹, 下田みどり 訳,Frisch, AEleen,飯塚, 正樹,下田, みどり, 出版社 オライリー・ジャパン 出版年 2003
 
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